1 福岡市との緊急時用連絡管
(1)上月隈・江辻緊急時用連絡管
福岡地区水道企業団と福岡市は、災害、事故等の緊急時において、水道水の安定供給に支障が生じた時に、水道水を可能な範囲 で相互に融通して送水を行う目的で、緊急時用連絡管を2か所整備し、運用しています。
ア 緊急時用連絡管の概要
緊急時用連絡管に関する基本協定書(平成5(1993)年2月25日付け締結)
・事 業 費 350,880千円(負担割合はそれぞれ1/2)
・施工主体 福岡市
・完成期限 平成7年3月31日
・布設か所 2か所
【上月隈緊急時用連絡管】
・所在地 福岡市博多区上月隈地内
・構造等 ダクタイル鋳鉄管 φ600mm、L=50m (企業団送水管φ1,200mmと福岡市配水管φ600mmを連絡)
・施工年 平成5年度
【江辻緊急時用連絡管】
・所在地 福岡市東区土井2丁目~粕屋町江辻地内
・構造等 ダクタイル鋳鉄管 φ800mm、L=455.7m(企業団送水管φ1,100mmと福岡市配水管φ1,100mmを連絡)
・施工年 平成6年度
イ 緊急時用連絡管を使用する応援給水に関する協定書
両者間での応援送水に関する要請・中止、経費等の取り決め
・締結 平成11年1月26日
ウ 運用事例
平成14年10月24~25日
多々良浄水場の高度処理導入に伴い、場内送水管切替工事時に企業団から福岡市へ送水(12,000㎥)
平成16年2月27~28日
多々良浄水場浄水処理改善事業に伴い、ろ過池流出管の切り込み工事時に企業団から松崎配水池へ福岡市が受水している範囲内で送水(11,370㎥)
平成22年8月30~31日
企業団下原系送水管の漏水事故に伴い、福岡市から企業団へ緊急送水(14,150㎥)
(2)西月隈緊急時用連絡管
福岡地区水道企業団と福岡市は、災害や事故等により、福岡地区水道企業団が行う用水供給に支障が生じた場合において、影響を緩和するため、福岡市の協力のもと、連絡管を用いて、福岡市を含めた構成団体への水道用水の供給を行うことを目的として、緊急時用連絡管を整備し、運用しています。
ア 緊急時用連絡管の概要
西月隈における緊急時用連絡管に関する基本協定書(平成29(2017)年9月27日付け締結)
・事 業 費 345,254千円
・施工主体 福岡地区水道企業団
・布設か所 1か所
【西月隈緊急時用連絡管】
・所在地 福岡市博多区西月隈4丁目地内
・構造等 ダクタイル鋳鉄管 φ1,100mm、L=164m(企業団送水管φ1,200mmと福岡市配水管φ1,350mmを連絡)
・施工年 平成29年度
イ 西月隈における緊急時用連絡管の使用に関する協定書
両者間での応援送水及び代替送水に関する使用時の手続き及び経費等の取り決め
・締結 令和4(2022)年3月17日
2 北部福岡緊急連絡管事業
(1)事業概要
ア 事業目的
当事業は、災害に強く水に不安のない福岡県を実現するため、地震のような自然災害、あるいは施設事故やテロなどの緊急事態に対する危機管理対策として、緊急時に水道用水を北九州市と福岡都市圏の間を相互に最大50,000㎥/日を融通することを目的として整備されたものです。
イ 事業内容
・事業主体:福岡県、北九州市
・工 期:平成19(2007)年1月~平成23年3月
・事業費 :約189億円(緊急連絡管事業:約108億円 水供給事業:約81億円)
・供用開始:平成23年4月
・維持管理:北九州市
・区 間: 本城浄水場(北九州市八幡西区)~下原配水場(福岡市東区)
・延 長: 約47km
・口 径: φ900~φ1000
工事は北九州市が福岡県から受託して実施しました。
緊急時用連絡管の構造は、マグニチュード7クラスの内陸直下型地震に耐えられる設計とし、地震時においてもその機能が十分発揮できるようなものとしています。
料金は、融通を受ける側が水関連経費と管使用料を含め、緊急時用連絡管使用時のみ支払います。
緊急時に連絡管の水質を保つための維持用水を活用した新たな北九州市水道用水供給事業と合併で事業化されました。用水供給先は宗像地区事務組合(宗像市、福津市)、古賀市、新宮町の1市1町1事務組合(3市1町)で、合わせて日量最大2万㎥を供給しています。
※福岡地区水道企業団の役割
当企業団は緊急時に北九州市から送られてくる水道用水を、福岡市水道局と共同して福岡都市圏へ配分します。
また、逆に北九州市へ送水する場合は、福岡都市圏の当企業団構成団体が節水をした水を取りまとめます。
ウ 事業経緯
平成17年6月 |
福岡県知事、北九州市長、福岡市長の会談 「地震などの災害時におけるライフラインの確保の一つとして、緊急時に北九州市と福岡都市圏で相互に水を融通する緊急時用連絡管として検討を進める。」 |
平成18年10月 |
「福岡地域広域的水道整備計画」改訂 「北部福岡緊急連絡管事業に関する基本協定書」締結 「北部福岡緊急連絡管の実施に関する覚書」締結 |
平成19年1月 |
事業開始 |
平成21年11月 |
「北部福岡緊急連絡管の実施に関する覚書に基づく確認書」締結 |
平成23年3月 |
北部福岡緊急連絡管の運用に関する協定書締結 |
平成23年3月 |
事業完了 |
平成23年4月 |
供用開始 |
3 利水ダムの洪水調節機能の強化
(1)事業概要
ア 事業目的
国は、近年の水害の激甚化を踏まえ、緊急時において利水ダムの有効貯水容量を洪水調節に最大限活用できるよう、令和2(2020)年の出水期から新たな運用(事前放流)を開始しました。
これに伴い、国管理の一級水系筑後川及び県管理の二級水系那珂川、多々良川において、河川管理者、ダム管理者、利水者が協力し、それぞれ令和2年5月29日に筑後川水系治水協定、令和2年8月31日に那珂川水系治水協定、令和3年1月29日に多々良川水系治水協定を締結しました。
イ 治水協定の主な内容
・洪水調節機能強化の基本的な方針
・事前放流の実施方針
・緊急時の連絡体制の構築
・情報共有のあり方
・事前放流により深刻な水不足が生じないようにするための措置
・洪水調節機能の強化のための施設改良が必要な場合の対応 など
(九州地方整備局HPより)
ウ 事前放流の概要
【実施方法】
3日後のダム上流の降雨量を予測し洪水の恐れがある場合、利水容量の一部を事前に放流することによりダムの水位を低下させ、治水容量として一時的に活用する。
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エ 事前放流の実施方針
・河川管理者(筑後川河川事務所又は福岡県)は、台風や大雨に関する気象情報が発表された時などに、ダム管理者へ情報提供し、事前放流を実施する体制に入るよう伝えます。
・各ダム管理者は、3日後までのダム上流域の予測降雨量が基準降雨量を上回り、予測したダムへの流入総量が、「洪水調節容量」「利水空き容量」及び「ダム放流総量」の合計を上回る場合、洪水調節可能容量の範囲内で、事前放流により容量を確保します。
事前放流により確保する容量=予測したダム流入総量-(洪水調節容量+利水空き容量+ダム放流総量) |
オ 緊急時の連絡体制の構築
・河川管理者,ダム管理者,関係利水者及び関係地方公共団体の間で、緊急時に、常に即時かつ直接に連絡を取れるよう、責任者及び連絡方法を明らかにして共有します。
【事前放流後ダムの水位が回復しなかった場合の対応】
・河川管理者は水利用の調整に関して関係利水者の相談に応じ、必要な情報(ダムの貯留制限の緩和の可能性、取水時期の変更の可能性など)を提供し、関係者間の水利用の調整が円滑に行われるよう努めます。
・関係利水者は、渇水調整協議会等において弾力的な水融通の方法を協議します。
・必要な水量が確保できず、利水者に特別の負担が生じた場合にあっては損失の補填制度を充てることができるものとします。
カ 福岡地区水道企業団の水源ダムにおける洪水調節可能容量等
(単位:千㎥)
水系名 | 筑後川 | 那珂川 | 多々良川 | |||
協定締結日 | R2.5.29 | R2.8.31 | R3.1.29 | |||
ダム名 | 江川ダム | 寺内ダム | 大山ダム | 合所ダム | 五ケ山ダム | 鳴淵ダム |
有効貯水量 | 24,000 | 16,000 | 18,000 | 6,700 | 39,700 | 4,160 |
洪水調節容量 | ― | 7,000 | 7,000 | ― | 8,000 | 1,860 |
利水容量 | 24,000 | 9,000 | 11,000 | 6,700 | 31,700 | 2,300 |
(うち企業団) | 約1,830 | 約1,970 | 2,900 | 1,590 | 3,040 | 1,500 |
洪水調節可能容量 | 2,432 | 5,414 | 3,368 | 235 | 3,718 | 1,528 |
基準降雨量 | 149㎜/6h | 144㎜/6h | 155㎜/6h | 141㎜/6h | 233㎜/6h | 146㎜/6h |