1 計画
福岡県の那珂川総合開発事業計画に基づいて、南畑ダムの上流に五ケ山ダムを建設し、洪水調節容量、利水容量(不特定用水、水道用水)、渇水対策容量(不特定用水、水道用水)を確保するもの。
(1)洪水調節容量は、ダム地点における基本高水流量(※1)440㎥/sのうち、370㎥/sを調節するとともに、基準点(南大橋)における基本高水流量1,350㎥/sを、南畑ダムと合わせた洪水調節により、計画高水流量(※2)900㎥/sまで低減させるため、800万㎥の洪水調節容量を確保する。
※1 基本高水流量
流域に降った計画規模の雨が、洪水を防ぐ手だてを行わないまま流れ出た場合の河川の流量を表し、洪水を防ぐ計画の基本となる洪水流量
※2 計画高水流量
那珂川の場合100年に1回の降雨による洪水を、南畑ダムと五ケ山ダムで洪水調節を行った結果、河道を流れる流量
(2)不特定用水は、良好な河川環境を維持するために、1,250万㎥の容量を確保する。
(3)水道用水は、番托堰付近地点において、当企業団に0.116㎥/s(10,000㎥/日)の取水を可能とするため、260万㎥の容量を確保する。
(4)渇水対策容量は、異常渇水時において、那珂川から取水している福岡都市圏の水道用水に対する補給及びかんがい用水など住民生活に与える影響を最小限に抑えるため、総量1,660万㎥の容量を確保する。
2 事業経緯
(1)事業主体である福岡県は、平成9(1997)年11月に那珂川総合開発事業(五ケ山ダム)全体計画の認可を受け、平成13年10月には、那珂川水系河川整備基本方針を策定しました。
(2)平成24年6月に、ダム本体工事(堤体建設工事、骨材製造工事)に着手しました。その後、事業はおおむね順調に進捗し、令和2(2020)年12月に完成しました。
(3)当企業団においては、牛頸浄水場へ導水、浄水処理した後、各構成団体へ送水する計画でしたが、曰佐江堰周辺の市街化に伴い、取水場等の用地取得が困難になったことや、より合理的かつ効率的な管理を行っていく観点から、改めて取水地点の検討を行った結果、取水地点を播托堰付近とし、取水(番托堰付近)、浄水(乙金浄水場)及び送水(乙金配水池)工程を福岡市水道局に委託しています。
3 建設経過
昭和54年度 |
予備調査に着手 |
昭和58年度 |
実施計画調査に着手 |
昭和63年度 |
建設事業採択 |
平成元年2月 |
那珂川総合開発事業五ケ山ダム建設工事に関する基本協定 (福岡県、福岡市、春日那珂川水道企業団、当企業団) |
平成9年11月 |
那珂川総合開発事業(五ケ山ダム)全体計画認可 |
平成13年10月 |
那珂川水系河川整備基本方針策定 |
平成14年12月 |
損失補償基準調印 |
平成15年5月 |
水源地域対策特別措置法(以下、水特法)に基づくダム指定 |
平成15年7月 |
那珂川水系河川整備計画策定 |
平成16年度 |
付替道路工事及び集団移転地造成工事に着手 |
平成16年9月 |
水特法第12条に基づく負担協定の締結 |
平成17年11月 |
利水者による水利権の申請 |
平成18年11月 |
基本協定書の一部改訂に関する協定書締結(事業費、工期) |
平成21年3月 |
那珂川総合開発事業(五ケ山ダム)全体計画変更 |
平成23年9月 |
仮排水トンネル工事に着手 |
平成24年2月 |
利水者による水利権取得 |
平成24年6月 |
ダム本体工事(堤体建設工事、骨材製造工事)に着手 |
平成24年9月 |
事業実施計画の変更認可 |
平成25年2月 |
付替道路が開通(国道385号他) |
平成25年3月 |
利水者による水利権の変更申請 |
平成26年2月 |
本体コンクリート打設開始 |
平成28年1月 |
本体コンクリート打設完了 |
平成28年11月 |
試験湛水開始 |
平成30年7月 |
平常時最高貯水位(EL.407.1m)到達 |
令和2年4月 |
洪水時最高水位(EL.413.4m)到達 |
令和2年7月 |
用水供給開始 |
令和2年12月 |
最低水位(EL.355.0m)到達 |
令和2年12月 |
試験湛水終了 |
令和3年1月22日 |
供用開始 |
4 概要
事業主体 |
福岡県 |
河川名 |
那珂川水系那珂川 |
位置 |
福岡県筑紫郡那珂川町大字五ヶ山 |
型式 |
重力式コンクリートダム |
目的 |
洪水調節 不特定用水 水道用水 渇水対策 |
堤高 |
102.5m |
堤頂長 |
556.0m |
堤体積 |
約935,000㎥ |
集水面積 |
約18.9㎢ |
湛水面積 |
約1.3㎢ |
設計洪水位 |
EL 415.9m |
サーチャージ水位 |
EL 413.4m |
常時満水位 |
EL 407.1m |
最低水位 |
EL 344.9m |
総貯水容量 |
40,200,000㎥ |
有効貯水容量 |
39,700,000㎥ |
洪水調節容量 |
8,000,000㎥ |
不特定容量 |
12,500,000㎥ |
水道容量 (当企業団容量) |
2,600,000㎥ (2,600,000㎥) |
渇水対策容量 (当企業団容量) |
16,600,000㎥ (440,000m³) |
堆砂容量 |
500,000㎥ |
管理開始 |
令和3年1月 |
当企業団開発水量 |
最大10,000㎥/日 |
5 事業費
1,050億円
6 企業団負担金
85億円
7 管理
福岡県が、令和3(2021)年1月から管理を開始。
通常時は、脊振ダム、南畑ダムの利水容量、五ケ山ダムの不特定容量及び水道用水容量を合わせた容量を統合的に運用しています。
渇水時(※)は、福岡市、福岡地区水道企業団、春日那珂川水道企業団及び河川管理者がそれぞれの裁量のもと、各自の計画に基づいてそれぞれの渇水対策容量を利用する運用としています。
渇水時の不特定容量は、上水3利水者の水道用水を除いた農業用水、工業用水のための容量となっています。
※渇水時
通常利水容量を使い切り、渇水対策容量を利用する場合のことです。