1 施設の経緯及び概要
昭和48(1973)年水道用水供給事業認可後、牛頸(うしくび)浄水場の建設を開始し、昭和58年3月に浄水能力178,800㎥/日の施設が完成しました。同年7月1日から電気計装設備、ポンプ施設等の試運転を行い、同年11月21日から構成団体へ水道用水供給を開始しました。
その後、五ケ山・大山取水事業に対応する浄水施設の増強を図るため、平成5(1993)年度に牛頸浄水場2系浄水池(20,000㎥×2池)の建設を開始し、平成11年度までの間に、次亜塩素注入設備、混和池、フロック形成池、沈でん池、急速ろ過池、沈でん物処理棟及び洗浄水槽の増設、脱水機本体と関連する電気計装設備、薬品注入設備、貯蔵棟の増設、さらに、電気計装、受変電、自家発電等のプラント設備、活性炭注入設備の増設などの2系施設の整備を順次進め、平成12年度、拡張分の浄水施設の供用を開始しました。
なお、牛頸浄水場の施設能力178,800㎥/日は、第3回拡張事業(平成4年3月認可)により、大山ダム分41,300㎥/日、及び五ケ山ダム分10,000㎥/日を合わせて51,300㎥/日が追加、第4回拡張事業(平成11年3月認可)により、大山ダム分10,700㎥/日がさ
らに追加となり240,800㎥/日となりました。その後、第4回拡張事業第2回変更(平成25年3月認可)により、五ケ山ダム分10,000㎥/日の取水地点を番托地点に変更するとともに、導水先を福岡市の乙金浄水場に変更し、現在、施設能力は230,800㎥/日となっています。
牛頸浄水場は、大野城市の南部に位置し、平均標高80mの自然景観に優れた丘陵地にあり、敷地面積157,000㎡を有し、各施設は、維持管理、経済性及び拡張スペース等を考慮して合理的かつ有機的なものとし、各施設の機能が最大限に発揮出来るよう配置しています。筑後川から取水した原水を凝集沈でん・急速ろ過方式により水道用水に浄水処理して、自然流下あるいはポンプ送水によって各構成団体の配水池まで効率的に水道用水を供給できるようになっています。
浄水施設の運転操作は、高度化、複雑化する施設管理の安定的、効率的な運営を目指すため、平成28年度の中央装置の更新からは、システムを場内系、場外系、ITV監視システムの3つに分ける分散方式を採用し、安全・確実及び安定的な浄水処理が可能なものとなっています。さらに各構成団体へ水道用水を供給するポンプ場及び配水池の監視制御はテレコントロール・テレメータにより行い、合理的かつ効率的に運用できるようになっています。
また、牛頸浄水場が取水している筑後川の上流ダム群でのプランクトン等の異常増殖や、農業排水による異臭味及び農薬の対策として、牛頸浄水場から約5.5㎞取水側にある筑紫野市山口(独立行政法人水資源機構の福岡導水路 第2トンネル入口)にて粉末活性炭注入施設を備え、活性炭の注入を行っています。
【牛頸浄水場 施設配置図】
【牛頸浄水場 処理の流れ】
【牛頸浄水場諸元】
施設能力:230,800㎥/日
施設名 |
施設概要 |
数量 |
山口活性炭注入設備 |
所在地:筑紫野市大字山口 混合槽:有効容量35㎥/槽 |
2槽 |
着水井 |
有効容量 1,059㎥/井 RC造 |
1井 |
混和池 |
有効容量 130㎥/池 RC造 |
3池 |
フロック形成池 |
有効容量 1,037㎥/池 RC造 |
6池 |
沈でん池 |
有効容量 2,726㎥/池 RC造(傾斜板) |
6池 |
急速ろ過池 |
ろ過面積 100㎡/池 RC造 |
24池 (内3池予備) |
浄水池 |
有効容量 11,500㎥/池 RC造 有効容量 20,000㎥/池 RC造 |
2池 2池 |
洗浄水槽 |
有効容量 585㎥/槽 RC造 |
2槽 |
洗浄排水池 |
有効容量 560㎥/槽 RC造 |
2槽 |
排泥池 |
有効容量 1,012㎥/池 RC造 |
1池 |
濃縮槽 |
有効容量 2,662㎥/槽 RC造 |
2槽 |
返送水貯留槽 |
有効容量 1,526㎥/槽 RC造 |
1槽 |
管理本館 |
地下2階地上3階RC造 延面積4,157㎡ |
1棟 |
水質センター本館 |
地上3階RC造 延面積2,561㎡ |
1棟 |
沈でん物処理棟 |
地下1階地上3階RC造 延面積3,664㎡ |
1棟 |
2 耐震化整備
福岡地区水道企業団は、従来から地震に強い管路システム構築のため、軟弱地盤に対しての耐震継手の採用や緊急時に備え補修用特殊管材料の備蓄を行っていますが、平成17(2005)年3月20日に発生した「福岡県西方沖地震」の教訓から、さらに地震に強い用水供給システムの構築のため、浄水施設及び送水施設の耐震化の方向性を示すために平成17年5月に学識経験者・関係団体・その他の水道事業者で構成する「福岡地区水道企業団地震対策検討委員会」を設置し、同委員会の提言を踏まえ耐震化に取り組んできました。(耐震工事の際の基本的な考え方は、第6章第1節を参照)
筑後川下流の筑後大堰から取水し、水資源機構の福岡導水施設を通じ導水された水を浄水処理し、企業団施設能力の約76%を占める最重要の基幹施設である牛頸浄水場は、耐震診断の結果、耐震補強対象の浄水施設は当初12施設(土木10、建築2)でしたが、その後の詳細設計により、4施設(土木)は、耐震補強が不要との結果でした。
なお、浄水場の施設は平成19(2007)年度~25年度にかけて耐震化を実施しました。
【事業計画】
・工 期:平成19年度~25年度
・総事業費:約30億円
・国庫補助事業:補助率1/3(ライフライン機能強化等事業)
・事業箇所:8施設(管理本館、沈でん池、ろ過池、浄水池、排泥池、濃縮槽等)
3 維持管理機能の強化
近年の筑後川の原水水質の変化や今後の気候変動等に対応し、将来にわたり安全で良質な水道用水を供給するため、水質管理機能の強化に向けた取り組みを行います。また、非常時にも迅速な対応を図るため、構成団体との効率的な情報共有を推進します。
【事業概要】
牛頸浄水場における残留塩素濃度低下事象や、送水管路の二重化等による送水環境の変化に対応するため、脱水機、塩素注入設備、水質監視装置の増設や、水質情報共有システムの導入等による水質管理機能の強化を図ります。
〇牛頸浄水場における脱水機の増設
〇送水施設における水質監視装置の増設
〇塩素注入設備の増設
〇水質情報共有システムの構築
〇山口活性炭注入施設の検討・改築
【全体事業費(令和5(2023)~9年度)】
約16億円
4 牛頸浄水場での高塩基度PACの本格導入
牛頸浄水場では主に5種類の薬品を用いて浄水処理を行っています。各薬品の使用量は原水水質状況や天候、取水量等に大きく左右されます。平成28(2016)年度からは、浄水処理の安定化を目的に、従来の水道用ポリ塩化アルミニウムから、より高い凝集性能を持つ高塩基度水道用ポリ塩化アルミニウムを導入しました。
【5種類の浄水薬品】
① 水道用ポリ塩化アルミニウム(PAC)・濁質の凝集
② 水道用次亜塩素酸ナトリウム・・・・・・消毒
③ 水道用水酸化ナトリウム・・・・・・・・pH調整
④ 水道用濃硫酸・・・・・・・・・・・・・pH調整
⑤ 水道用粉末活性炭・・・・・・・・・・・かび臭除去等
近年は、局地的豪雨等の影響による原水濁度の急激な上昇が著しく、浄水処理の困難さが増しています。また、汚泥処理でもアルミニウムの濁度に対する添加比(ALT比)の上昇に伴う処理効率低下が生じていました。そのため、安全な水道用水を安定的に送水し続けるためには、高濁度原水に対する浄水処理の強化策が必要不可欠な状態でした。
当企業団では、通常のPACに変えて、高塩基度PACの導入を検討し、平成25年~27年度に実証実験を行い、 ① 処理水質の水質改善効果(ろ過水の濁度、ピコプランクトンの低減効果など) ②浄水処理薬品使用量・薬品費削減効果 ③濃縮スラッジ濃度の上昇及び脱水機処理量の増加(PAC注入率を削減したことによるALT比の低下が主な原因と考えられる。)が確認できたため、平成28年度からは高塩基度PACに切り替えて運用を行っています。