1 計画
山口調整池は、福岡導水事業の一環として筑紫野市大字山口地内に築造された堤高60m、総貯水容量400万㎥のロックフィルダムです。
この調整池は、福岡地区水道企業団への導水の安定供給を図る目的で計画されたものであり、筑後川からの導水の一部を貯留し、取水制限及び施設のトラブル等が発生した場合に不足量を補給するものです。
2 事業経緯
(1)昭和58(1983)年11月、福岡導水の暫定通水を開始して以降、調整池建設に向けて諸調査並びに諸検討を進め、関係機関との協議が整ったため、昭和61年9月の事業実施計画変更の認可を得て調整池建設の法手続きを完了しました。
(2)平成2(1990)年8月、第1号道路工事に着手、順次、仮排水路トンネル工事、調整池本体工事、右岸鞍部および附帯施設工事等を実施しました。
(3)平成9年10月、河川法第30条第2項に基づく一部使用検査を受けて、同年11月6日から試験湛水を開始しました。
(4)平成11年2月落水を完了し、堤体の挙動等の計測結果を解析し調整池の安全が確認され、同年3月河川管理者の完成検査を完了し、調整池は完成しました。
3 建設経過
昭和56年12月 |
調整池利水計画検討開始 |
昭和57年3月 |
調整池基本設計策定 |
昭和61年9月 |
事業実施計画の変更認可(山口調整池の追加) |
平成2年2月 |
損失補償基準調印 |
平成4年2月 |
建設工事開始 |
平成9年10月 |
調整池完成 |
平成9年11月 |
試験湛水開始 |
平成11年4月 |
調整池の運用開始 |
平成13年3月 |
事業完了 |
【山口調整池の運用】
福岡都市圏の水需要の約3分の1(一日平均給水量割合)を占める筑後川は、福岡都市圏にとって極めて重要な水源となっており、福岡導水は都市機能を支えるライフラインとして欠かすことの出来ない重要なものとなっています。しかし、筑後川には次のような特殊な利水形態があり下流域利水も欠かすことができません。
・筑後川下流の農業用水には、淡水取水という有明海の干満差を利用した特殊な方法により取水されており、河川流下量が少ない場合は塩分濃度が高くなり取水停止に追い込まれることとなる。
・筑後川の河口区域周辺は、有明海のノリ養殖漁場として全国有数の生産量を誇っており、ノリの生育には栄養塩類の豊富な筑後川の水が安定して確保されることが必要不可欠である。
山口調整池からの取水等については、筑後川流域関係者と流域外である福岡都市圏の両関係者間の調整・協議が行われ、次の範囲で行うこととなっています。
(1)取水
調整池からの取水は、許可水利権の量の範囲内で行う。
一 淡水取水障害により筑後川からの取水が制限されたとき。
二 筑後川流域の悪化により筑後川からの取水が制限されたとき。
三 導水路及び筑後川取水施設等のトラブルにより筑後川からの導水に障害が生じたとき。
四 水質悪化が予想され貯留水の入れ替えが必要なとき。
五 ダムその他貯水池内の施設及び工作物の点検若しくは整備が必要であるとき。
六 その他やむを得ない必要があるとき。
(2)貯留
調整池への貯留は、福岡導水の取水量の範囲内で行う。
【貯留は筑後川の水に限られ、兎ヶ原川の自流および流域内の降雨(筑紫野に降った雨は調整池に貯留することなく下流へ放流されます。】
(3)補給
調整池から福岡導水への補給は、福岡導水の筑後川からの取水が、筑後大堰下流における農業用水の淡水取水障害対策のための制限又は停止をうける場合、もしくは、福岡導水の導水路トラブルが発生した場合に行う。
(4)放流
調整池地点における兎ヶ原川の流域からの流水は、貯留することなく下流兎ヶ原川に放流するものとする。
4 概要
事業主体 |
水資源開発公団(現:独立行政法人水資源機構) |
河川名 |
筑後川水系兎ヶ原川 |
位置 |
福岡県筑紫野市大字山口 |
型式 |
中央遮水ゾーン型ロックフィルダム |
目的 |
水道用水 |
堤高 |
60.0m |
堤頂長 |
326.0m |
堤体積 |
1,060,000㎥ |
集水面積 |
(1.4㎢) |
湛水面積 |
0.26㎢ |
設計洪水位 |
EL 119.5m |
常時満水位 |
EL 118.0m |
最低水位 |
EL 96.0m |
総貯水容量 |
4,000,000㎥ |
有効貯水容量 |
3,900,000㎥ |
水道用水容量 |
3,900,000㎥ |
堆砂容量 |
100,000㎥ |
主務省 |
厚生労働省 |
調整池の運用開始 |
平成11年4月 |
5 事業費
432億円
6 企業団負担金
全額
7 管理
水資源開発公団(現:独立行政法人水資源機構)が、平成11年から「福岡導水山口調整池管理規程」に基づき管理を開始