淡水化の仕組み

全体のシステム概要

海水の取水から淡水化、送水まで、最新の技術と細心の配慮を徹底しています。

海水を取り入れる海底の取水施設と、取り込んだ海水を真水にする地上部の淡水化プラント施設が当事業の中心的な施設となります。

システムフローとして、まず最初の段階となる取水施設には、新技術の[浸透取水方式]を採用して海底に埋設した取水管から海水を取り入れます。次に、取水ポンプにより淡水化プラントへ運ばれた海水が真水へと淡水化され、生産水となって導水されます。

淡水化の方法には、主に「蒸発法」「電気透析法」「逆浸透法」の3つがありますが、その処理プロセスが簡単で、しかも経済的な方法として「逆浸透法」のシステムを導入しました。この方法は、水は通すが塩分は通さない膜「半透膜」を使用して海水を淡水化するものです。

全体のシステムフロー

詳細は下のボタンから処理フローページに移動できます。

取水施設

自然の力を有効活用できる新技術の取水システムです。

海水淡水化のためには、まず海の水を取水する施設が必要です。当事業では、海中に取水管を設置する従来型の[直接取水方式]ではなく、海底の砂の中に取水管を埋設する[浸透取水方式]という新技術を採用しました。この新技術は「海の緩速(かんそく)ろ過システム」と呼ばれ、砂の層を利用して海水をろ過する方式で多くのメリットがあります。

まず、海中に構造物が露出しないので漁業や船の航行の妨げにならず、強い波浪による構造物への被害も避けられるなど、安全性が高められます。

また、海底の砂の層がフィルターの役割を果たすので水質が安定し、ゴミや不純物が少なく清澄な海水を確保できます。

そして、魚の卵や海藻などを取水管に吸い込むこともないので、海洋生物の生態系など環境への影響も抑えることができます。

取水管の中に付着するフジツボやイガイの卵なども砂の層でろ過されるので、管内の清掃作業が軽減でき、維持管理においてもコストダウンができます。

さらに、波が寄せたり引いたりする力によっても海底の砂が動き、取水管の目詰りの原因となるゴミを取り除いてくれるなど、自然の力をできるだけ活用した新技術です。

海の緩速ろ過システム
淡水化プラント施設

心臓部の淡水化システムには、逆浸透法を採用しています。

取水した海水は地中の導水管を通って取水井(しゅすいせい)に集められ、ポンプにより当施設の心臓部である[逆浸透システム]に海水が送られ、「逆浸透膜」によって海水を淡水化するのです。

淡水化の原理は、「半透膜」で仕切られた容器に真水と海水を入れたとき、両方の水は塩分濃度が均一になろうとして真水が半透膜を通って海水側に吸い込まれます。これを「浸透現象」といいます。そして、ある圧力が生じたときに浸透現象は止まります。この圧力差が「海水の浸透圧」です。

このとき、海水側に浸透圧以上の圧力を加えると、浸透現象とは逆に海水側から半透膜を通して真水が押し出されます。この現象を「逆浸透」といい、このような原理で海水から真水をつくるのが「逆浸透システム」です。

淡水化プラント施設
生産水と濃縮海水

生産水は福岡都市圏に送られて、濃縮海水は海にかえします。

当施設の[逆浸透システム]では、半透膜に改良を重ねて、従来は約40%だった淡水化率を約60%程度まで向上することができる「高圧逆浸透膜」を使用しています。また併せて「低圧逆浸透膜」も使用することで、より良好な水質の水を安定的に供給しています。

こうして淡水化される水は日量最大5万立方メートルにのぼり、生産水は浄水場の浄水とブレンドした後、福岡都市圏の配水池へ送られます。

また、海水から真水をとり除いた濃縮海水は、環境に配慮して水処理センターの放流水(下水処理水)と混合し、濃度を薄めて海に放流されます。